あなたが消えた夜に 中村文則
自己啓発本の類いが好きでよく読む。
でもそれは自分の中でうっすら進む道が見えている時、
答えがわかっているけれど動けない時お世話になっているように思う。
進めなくなった時、わからなくなった時、私はいつも物語を探す。
尊敬する人の話を聞くことも、恋をすることも、知らない場所に行くことも
全部私の頭と心をパワーアップさせてくれるし考えやすくなるけれど
やっぱり誰かが作ってくれた物語を読むことが、
私にとって一番助かる。
だから私の本棚には私の救われる物語が並ぶ。
それは私が生きていきやすいように今まで自然と選んできたんだと思う。
自分の信じたい答えを探すような、そんな気持ちで物語を読んできた。
だからこの本に出会った時は怖かった。
人の無意識の選択が積み重なってたどり着いた
救われない人生が絶対的に存在することが書かれてあったから。
そもそも、本当に無意識というものがあるのか、
あればそれは人にとって幸せなことなのか。
この物語には無責任じゃない、きれい事じゃない作者の思う現実がある。
その現実はその人が自ら育ててきたのか、それともすでにそこにあって
必然的に触れなければいけないものだったのか。。
そんな現実の中でもひたすら続く命の存在があることを
物語を通して強く訴えかけてくる。
もしかしたら、人とその人の命は別物なのかもしれない。
それが正しいのかわからないがそんな風にも考えさせられた。
この先、自分がこの世に存在していることが怖くなるくらい
救われないと思う日が来るのかもしれない。
それでも、ただ命は続いていくことをこの本は教えてくれた。
あとがきの最後には中村文則さんのメッセージがある。
「共に生きましょう」と。